2014年8月24日日曜日

リバティベル・ストーリー、そして8/21のライブのこと

リバティベルには本当にお世話になった。今から8年ほど前のことだ。引っ越したばかりの僕は近所を歩いていると、甲州街道沿いにこつ然と現れたリバティベルを発見したのだった。

奥のステージではカントリーバンドが演奏していた。ミュージシャンもお客さんもみなテンガロンハットにジーンズという出で立ち。会場は超満員だった(ように記憶している)。手拍子を叩いたり、みな楽しそうだ。笑顔が溢れている。この唐突にアメリカンな雰囲気はなんなんだ?と立ちつくしていると、中にいたお客さんの一人が僕に気がついて、君も仲間に入れよ、とでもいうように手招きをした(ように記憶している)。

当時、僕は弾き語りでライブの出来る場所を探していて、しかもアメリカン・ルーツ・ミュージックに傾倒していた。「ここはもってこいだ、家からも歩いていけるし」とさっそく連絡を取り、後日レパートリーを書いた紙を持って伺った。

アメリカン・ルーツ・ミュージックというのは、20世紀前半にアメリカ南部で発展した黒人のゴスペル、ブルース、白人のカントリーなどの音楽のことで、それらは現在のポピュラー・ミュージックの元になっている。もしアナタがギターかピアノを使って歌詞とメロディーのある3分ばかりの曲を書こうと思ったら、それらの音楽を知っているか知らないかに関わらず、影響を受けないことはむつかしい。

僕のレパートリーはカントリーばかりではなかったし、オリジナルもやるので、受け入れてもらえるかどうか少し心配だったが、オーナーのケン川越さんはこころよく出演を承諾してくださった。コネもないのに、いきなりノルマなしにワンマンライブが出来る所など、東京中どこを探してもここ以外にはない。それから約2年あまりの間、2ヶ月に一回のペースでリバティベルのステージに立った。まだ自分の歌声に自信の持てなかった僕にとって、それはいわば修行の場だった。お客さんにはその修行に無理やりつき合わせたことになるが、なにやら尋常でないひた向きさは見ていてそれなりに興味深かったのではないかと思う。なにしろワンマンである。二部構成にしたり三部構成にしたりしながら、同じ曲を何度も歌ったりもした。同じ曲を何度も聞かされる側としてみれば結構しんどかったのではないかと思うが、当時の僕はアメリカ音楽の伝道師にでもなったような心境だった。これが偉大なるアメリカン・ミュージックであり、ここはリバティベルである、そして僕はこの時代のボブ・ディランなのだ、とまったくもって誇大妄想症的な強引さで押し切った(ちなみに誇大妄想症の方はいまだに治っていない)。

アメリカ音楽の養分をたっぷりと吸収し、オリジナル曲もしだいに完成させていった僕は(つまりステージでは未完成のまま演奏していた)、ついに念願のバンド・サウンドへのオリジナル曲の移植を実現すべくバンドを結成した。これが第一期KOSMICバンド。今回ベースで参加してくれた平賀敦哉さん(通称あっちゃん、従兄弟です)はこの時のメンバーだ。バンド結成にともない、弾き語りライブを続けていく理由のなくなった僕は、リバティベルといったんお別れをすることを決心した。ケン川越さんとキャンディ岡田さんには、必ずまた戻ってきますと約束して、最後のライブを行った。この日、最初に歌った曲はレナード・コーエンの「Bird On Wire」だった。

そして、約束を果たすべく馳せ参じたのが今回の凱旋ライブである。いや凱旋ライブというほど派手なものではないのだが、個人的には思い入れがあるのだ。

現在、KOSMICはドラマーのスガタノリユキ、ギタリストのコウノハイジとともに第二期KOSMICバンドを組んで毎月一回のペースで都内のどこかでライブをやっている。今回はドラマーのスガタさんが他のバンドの仕事で参加できないということで、それをきっかけにしていろんな友達に声をかけてみた。一人でやるより大勢でやった方が見栄えが良いし、長丁場でも間のびしないですむ、と勝算もはたらいた。題して『KOSMIC and Friends』。まずはドラマーの奥村純さん(通称おくにゃん、occurpooというバンドをメインに活動しています)に声をかけてみた。僕がソロ活動を始める前に組んでいたバンド、DIONYSOSでのパートナーである。ありがたいことにふたつ返事で引き受けてくれた。一度は同じ夢を追った彼と十数年ぶりにまた同じステージに立つのは、ほとんど別れた元かみさんと久しぶりに再会して「もう一度友達からよろしくお願いします」と言っているようなくすぐったさだった。それから第一期KOSMICバンドからベースの平賀敦哉さん(残念ながら本番では一曲しか参加出来なかったけど)。そしていつも機材面のバックアップで大変お世話になっている中村眞一さん。今年のローリング・ストーンズ公演で出会って以来知り合いになった山本祐紀くん。ギターは毎月のライブでおなじみのハイジくん。みなこころよくこの企画に賛同してくれた。リハーサルもたいしてしていない即席バンドだったが、でもそれにしてはなかなか乙にいった演奏だったように思う。小さなステージにところ狭しと並んで全員で演奏した「I Shall Be Released」はこの日のハイライトだった。贅沢で、幸せな一時だった。

そして、ご来場くださったみなさん。本当にどうもありがとうございました!

今回はミュージシャンも、突然の申し出にこころよく賛同してくれる優しい人たちばかりだったが、来てくださったお客さんも不思議と優しい方たちばかりだったように思う。みなさんの見守るような愛を感じながら演奏した。いつものKOSMICのライブはもっとずっとアグレッシブにどうだ~!と空気をかき回してオーディエンスももっとやれ~!と応えてくるようなハードな演奏になるのだが、それとはずいぶんと違った感触の演奏になった。やはりライブほど「時」と「場所」の不思議さについて考えさせられるものはない。今生きているこの一瞬一瞬がかけがえのない人生の「時」であり、そうして生きているそれぞれの人間たちがそれぞれの「時」の中で交差し合う点としての「場所」・・・WHAT IS LIFE?・・・(と、いつもの習性で頭の中は哲学的な迷宮の中へ・・・)。

この日の模様は、撮影に来てくださったフォトグラファー有馬朋子さんの写真や動画などとともに、後日、英語版ブログの方でまた紹介させていただきます。

次回のライブはレギュラーのラインナップに戻って9/13(土)下北沢モナレコーズにて18時30分からです。

どうもありがとうございました。


                                                  photos : rumi nakamura




KOSMIC and Friends

~Originals and Covers~


SET LIST  PART 1 (ORIGINALS)

1 YOU AIN’T GOIN’ NOWHERE (Bob Dylan)
2 OL’ TOWN STREET PARADE
3 MIDNIGHT ZOO
4 OUT INTO SPACE
5 DOLPHINS
6 ONCE (Solo)
7 QUESTIONS
8 RADIO MOTHERSHIP
9 MR. FREEDOM

KOSMIC on Vocal, A.Guitar, Bass, Keyboard 
Performed with :
Jun Okumura on Drums, Chorus
Haiji Kohno on E.Guitar, Chorus
(Except”ONCE”)


SET LIST  PART 2 (COVERS)

1 THUNDER ROAD (Bruce Springsteen) (Solo)
2 PEGGY SUE (Buddy Holly) (Solo)
3 CRAZY FOR YOU (Madonna) (Solo)
4 SATELLITE OF LOVE (Lou Reed) (With Jun Okumura)
5 熟女の唄 (Performed by Yuki Yamamoto)
6 恋するカレン (大瀧詠一) (Performed by Yuki Yamamoto)
7 LEAN ON ME (Bill Withers) (Solo)
8 BLUE SUADE SHOES (Carl Perkins) (With Jun Okumura, Haiji kohno)
9 I SHALL BE RELEASED (Bob Dylan)
   (With Synichi Nakamura, Atsuki Hiraga, Yuki Yamamoto, Jun okumura, Haiji Kohno)
10 RUBY'S ARMS (Tom Waits) (Solo)

KOSMIC on Vocal, A.Guitar, Keyboard
Jun Okumura on Drums, Chorus
Haiji Kohno on E.Guitar, Chorus
Yuki Yamamoto on Vocal, A.Guitar
Synichi Nakamura on Vocal, A.Guitar
Atsuki Hiraga on Bass



リバティベルのWebsite

ドラマーの奥村純さんがやっているoccurpooのWebsite

山本祐紀くんが歌ってくれた「熟女の唄」の宅録バージョン

新作ミュージック・ヴィデオ「WHAT IS LIFE」公開中!

KOSMIC Official Website

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